もともと桂離宮は宮家の別荘として建設されたものであるが、幕末には勤王の志士の宿舎になるなど、廃屋寸前にまで朽廃していた。しかし、それが文化財の指定を受け、数度の解体修理をされ今日の姿を保っている。桂離宮は国の重要文化財となることによって、住宅としての役割を超越して新しい歴史的価値を獲得したといえる。その結果として、四〇〇年も経ちながら建物は物理的にも耐用しているのである。一方、建売り住宅は、土地の高騰を前提としたもので、建物は仮の住まいで、建物の価値は土地の値上がりによって償却されるという暗黙の了解が、売るほうにも買うほうにもあった。
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現に高度経済成長期には、土地は数年のうちに倍額まで高騰し、建物の経済的な評価を無意味にしてしまった。以上にみるとおり、建物の耐用年数は建物の主要構造材の物理的な耐用年数が前提となり、それに経済的な評価が加わって決定されてきたとしてよい。ここで重要なことは、もともと建物の壁の内部の通気性が悪く、室内外の温度差の違いによって結露が生じるような状態で輸入栂材を使用した場合は、十分な物理的耐用年数を期待できず、檜などの適切な構造部材が伝統的な工法にしたがって使用されていれば、物理的耐用年数はメンテナンスによって飛躍的に増進することである。いい換えると建物の物理的な耐用年数は建物それぞれに固有する先天的条件とメンテナンスによって変わる概念といえる。その一方、経済的評価、いい換えると経済的耐用年数は時代の社会情勢に大きな影響を受ける概念といえる。