住宅を建て、一年以上の入居経験世帯を対象にした、九三年度の生活調査のデータがある。「家族が集まるのはリビングか?」という問いに六七パーセントが「はい」と答えている。たしかに、家族はリビングルームに集まるものらしい。ではそこで、何をしているのか?「テレビ、読書、音楽などはリビングで?」という問いに「はい」と答えたのは八一パーセントにもなっている。わたしは平均的日本の家族におけるリビングのようすを想像してみた。
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子ども二人の会社員の家族、妻は昼間パートに出ている。午後七時半、中学校一年生の長女と小学校四年生の長男は食事をすませると、リビングのソファに座る。長女はMDウォークマンを聴きながらグラビア誌をめくり始め、長男はテレビにかじりつく。ちょうどそのころ父親が帰宅する。ふだんより早いほうかもしれない。母親は父親の食事の仕度を始める。食卓にもテレビの音は届く。夫婦の会話はほとんど交わされない。だが家族の姿はたがいに確認できる。ひとこと、ふたこと言葉をかわすこともあるだろう。やがて長女は二階の自室にひきあげ、長男もそれを追うようにして姿を消す。長女はコードレスフォンの子機に。長男はテレビゲームに手を伸ばす。毎日反復されるリビングルームの日常シーンというのは、案外こんなところだろうと思う。子どもが高校生くらいになれば、ダイニングやリビングにいる時間はさらに減るはずだ。わたしの想像する家族の間には、「親密で楽しい会合」は存在しない。また先の調査によると、「テレビを見ながら食事をする」家庭が七六パーセントにものぼる。テレビは食卓からも見ることができる、リビングのどこかに置かれているのだろう。食事中にテレビを見ている家庭が、食事を終えるとテレビを消して「語り合う」とはやはり考えにくい。おそらくリビングでの主役はテレビなのだ。もしも大画面のワイドテレビがその場からなくなれば、リビングルームはとたんに求心力を失うのかもしれない。日本の平均的家庭においては、リビングルームは外に開いたパブリックスペースでもなければ、家族の団らんの場でもないのか?